現在、2026年2月20日。イタリアで開催されているミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピックは大会終盤を迎え、連日熱い戦いが繰り広げられています。しかし、フィギュアスケートをはじめとする主要競技の表彰台に「ロシア」の国旗が掲げられることはありません。
「なぜロシアは出られないの?」「これは差別ではないのか?」という疑問、そして「アリーナ・ザギトワ選手のようなスターを見たかった」というファンの悲痛な声が多く聞かれます。本記事では、プロのファクトチェッカーとして、2026年現在の最新状況に基づき、ロシア除外の真の理由と、ザギトワ選手の現状について詳しく解説します。
ロシアが国家としてオリンピックに参加できない最大の理由は、2022年2月から続くウクライナへの軍事侵攻に伴う国際オリンピック委員会(IOC)の制裁措置です。
2022年北京五輪の直後、ロシアは「オリンピック休戦(Olympic Truce)」の期間中に軍事行動を開始しました。これはオリンピック憲章の精神に対する重大な違反と見なされました。2026年現在も、この地政学的な問題は解決に至っておらず、IOCおよび各国際競技連盟は、ロシア(および支援するベラルーシ)の国家としての参加を認めていません。
今回のミラノ・コルティナ五輪においても、以下の制限が厳格に適用されています。
2024年のパリ五輪から引き続き、2026年ミラノ・コルティナ五輪でも、個人競技に限って「中立な個人選手(AIN: Individual Neutral Athletes)」としての参加枠が設けられました。しかし、これには極めて厳しい審査基準が存在します。
IOCは以下の条件を満たす選手のみに、中立選手としての参加権を与えています。
その結果、2026年大会でも、フィギュアスケートやスキーの有力選手の多くが「中立」の資格を得られず、出場を断念せざるを得ない状況となりました。
質問者様が「差別だ」と感じる背景には、スポーツと政治を切り離すべきだという「スポーツの政治的中立性」への期待があるからでしょう。
ロシア側や一部のアスリート、人権活動家の中には、「個人のアスリートが政府の行動によって機会を奪われるのは、国籍による差別である」と主張する声もあります。国連の人権理事会の一部専門家も、過去に同様の懸念を表明したことがあります。
一方でIOCは、「これは差別ではなく、他国の選手が安全に、かつ平和的に競技に参加できるようにするための制裁である」という立場を貫いています。特にウクライナの選手たちが練習環境を奪われ、戦火にさらされている中で、ロシアの選手だけが何事もなかったかのように参加することは、公平ではないという判断が働いています。
「ザギトワが見たかった」という願いについてですが、実はロシアへの制裁がなかったとしても、2026年のミラノ・コルティナ五輪に彼女が出場する可能性は極めて低いのが現実です。
2018年平昌五輪の金メダリストであるアリーナ・ザギトワ選手は、2019年12月に競技活動の「休止」を宣言しました。それ以降、彼女は以下のような活動に主軸を移しています。
2026年現在、彼女は23歳。近年の女子フィギュア界、特にロシア国内の若手の台頭は凄まじく(いわゆる4回転ジャンプ時代)、数年のブランクがある彼女が競技の第一線に戻り、代表枠を勝ち取ることは現実的ではありません。つまり、彼女がいないのは「制裁のせい」だけでなく、「彼女自身がすでにプロ(商業的活動)としてのキャリアを選択しているから」と言えます。
ロシアが現在も厳しい目で見られているもう一つの要因は、2022年北京五輪で発覚したカミラ・ワリエワ選手のドーピング問題です。この問題により、ロシアの組織的なドーピング体制に対する不信感が再燃しました。
ワリエワ選手に対しては、2024年にスポーツ仲裁裁判所(CAS)から4年間の資格停止処分が下されました。この処分の余波により、ロシアフィギュアスケート連盟全体の信頼が失墜し、復帰への道のりをさらに険しいものにしています。
今回の事態をまとめると、以下の3点が主な要因です。
「ザギトワに勝ちたかった」という質問者様の情熱は、スポーツマンとして非常に素晴らしいものです。しかし、現在の国際社会においてオリンピックは、単なる競技会以上に「平和の祭典」としての側面を重視しています。政治とスポーツの境界線については、今後も議論が続くことでしょう。
もし彼女の滑りが見たいのであれば、現在は競技会ではなく、ロシア国内や国際的なアイスショーの配信を通じて、より成熟した彼女の演技を楽しむことができます。2026年のミラノ・コルティナ五輪は、新しい世代のヒーローが誕生する舞台として注目しましょう。