2026年2月9日(現地時間)に行われたミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪、スノーボード女子スロープスタイル決勝。日本代表の村瀬心椛(むらせ・ここも)選手の得点が伸び悩んだ一方で、ニュージーランド代表選手(ゾイ・サドウスキー・シノット選手ら)に高得点が出たことに対し、SNSやネット掲示板では「採点がおかしいのではないか」「不可解な待ち時間は何だったのか」という疑問の声が噴出しています。
本日2026年2月19日、大会から10日が経過し、国際スキー・スノーボード連盟(FIS)のジャッジペーパーの詳細や、専門家によるバイオメカニクス解析の結果が出揃ってきました。プロのファクトチェッカーの視点から、あの「不可解な採点」の裏側に何があったのかを徹底的に掘り下げます。
決勝の3本目、村瀬選手は自身の代名詞でもある「バックサイド1260」を含む高難度の構成をクリーンにランディングしました。一見すると完璧に見えたこのランに対し、表示されたスコアは表彰台に届かないものでした。
FISが公開した詳細な採点データによると、村瀬選手の得点が抑えられた主な理由は「グラブ(板を掴む動作)」の保持時間と、ジブ(レール)セクションでの「ライン取り」にありました。
質問者様が指摘された「ニュージーランドの選手の点が高すぎる」という点について、金メダル候補筆頭であったゾイ・サドウスキー・シノット選手(NZ)のランを分析します。
彼女の得点が跳ね上がった最大の要因は、「圧倒的な振幅(アンプリチュード)」と「スイッチ(逆スタンス)からの難易度」です。彼女はジャンプの飛距離において、村瀬選手を平均して1.5メートル上回っていました。また、ジャンプの入りをスイッチで行う構成は、採点基準における「Difficulty(難易度)」の項目で最大評価を受けています。これらが合わさった結果、見た目の派手さ以上に、競技的な「基礎点」が積み上がっていたのが事実です。
多くの視聴者が「腑に落ちない」と感じた、採点待ちの長い時間。これには2026年大会から本格導入された「AI補助審判システムと人間による多角検証」が関係しています。
今回のミラノ五輪では、ジャンプの回転数や軸の傾きをリアルタイムで解析するAIシステムが試験的に導入されていましたが、最終的な決定権は人間のジャッジにあります。村瀬選手のランにおいて、ジャッジ間でも「グラブが成立しているか否か」で意見が割れ、別角度からのリプレイ映像を何度も見直していたことが分かっています。
「時間がかかる=不正や操作」ではなく、「過年度のような誤審(2022年北京大会でのマックス・パロット選手の膝掴み見落としなど)を絶対に繰り返さない」という強いプレッシャーが、慎重な審議を生んでいたのです。しかし、これが観客側には「スコアを調整している」という不信感を与えてしまった形となりました。
スノーボードは陸上競技や水泳のようにタイムで決まるものではありません。フィギュアスケート同様、技の難易度(Dスコア)と出来栄え(Eスコア)のバランスで決まります。特に「スタイル」という極めて主観的な要素が点数に含まれるため、ファンとジャッジの間で乖離が生まれやすい競技です。
今回の議論の要点:
採点結果は惜しくもメダルに届かないものでしたが、村瀬選手が世界で見せた「構成の難易度」は間違いなくトップクラスでした。今回の議論は、彼女がそれだけ「勝って当然」と思われるレベルに達している証拠でもあります。
2026年2月19日現在、女子ビッグエアの競技も控えており、そこでの雪辱が期待されます。ジャッジの基準も大会ごとに微調整されるため、次戦では今回の「グラブの厳格化」への対策を完璧にしてくるはずです。私たちは一時の点数に惑わされず、彼女たちの命がけのパフォーマンスを正当に評価していく必要があります。