新NISA制度が開始されてから丸2年が経過した2026年2月。投資家の皆様の間で今、最も議論されているのが「特定口座(課税口座)で保有している含み益たっぷりの資産を、税金を払ってでも新NISAに移すべきか」という問題です。
特に、現政権下で議論が再燃している「金融所得課税の強化(増税)」の足音が聞こえる中、40代という人生の折り返し地点にいる共働き世帯にとっては、この判断が老後資金の数百万〜一千万円単位の差に直結します。
今回は、45歳・共働き・特定口座400万円(含み益260万円)という具体的な状況に基づき、プロの視点から「売却して新NISAへ移行すべきか、そのまま持ち続けるべきか」を徹底解説します。
1. 結論:今すぐ売却して新NISAへ「最速移行」が正解である3つの理由
結論から申し上げます。相談者様の場合、特定口座の400万円は速やかに売却し、新NISAの成長投資枠(年間240万円上限)を使って最短の2年で移し替えるのが、長期的な資産形成において圧倒的に有利です。
「利益に対して約20%の税金(約53万円)を今払うのはもったいない」と感じるかもしれませんが、その心理的ハードルを越えるべき明確な理由が3つあります。
① 金融所得課税の増税リスクを回避できる
2026年現在、政府内では防衛費の増額や少子化対策の財源として、現在の20.315%から25%〜30%への「金融所得課税の引き上げ」が具体的な検討段階に入っています。もし将来的に税率が上がれば、現在持っている260万円の含み益に対してかかる税金も当然増えます。
NISA枠に移してしまえば、将来どれだけ税率が上がろうとも、その枠内での利益は「永久に非課税」です。今のうちに20%の税金を払って「非課税枠という聖域」に資産を避難させることは、最強のディフェンス策となります。
② 「非課税の複利効果」を最大化できる
特定口座で持ち続けた場合、将来売却する時に必ず利益の20%以上が差し引かれます。一方、新NISAに移せば、そこから先の値上がり分には1円も税金がかかりません。45歳から積立終了・取り崩し開始までの20年以上の期間を考えると、「運用益に対して一切課税されない環境」で再投資し続けるメリットは、今支払う税金のコストを遥かに上回ります。
③ 資産の「色付け」を整理できる
共働きで安定した収入がある今のうちに、管理が複雑になりがちな特定口座を整理し、新NISAという「最強の非課税口座」に資産を集約させることで、リバランスや出口戦略(出口での計算)が格段に楽になります。
2. シミュレーションで比較:特定口座vs新NISA移行
では、実際に数字で見てみましょう。現在400万円(元本140万円+利益260万円)を保有しているケースで、今後20年間、年利5%で運用できたと仮定します。
パターンA:特定口座でそのまま20年運用
- 20年後の資産額:約1,061万円
- 課税対象の利益:約1,061万円 – 140万円 = 921万円
- 支払う税金(20.315%):約187万円
- 手残り:約874万円
パターンB:今売却して税金を払い、残り約347万円を新NISAで20年運用
※利益260万円に対し、約52.8万円の税金を支払い、手元に残った347.2万円をNISAへ移行。
- 20年後の資産額:約921万円
- 支払う税金:0円
- 手残り:約921万円
結果:新NISAへ移した方が、手残りベースで約47万円以上多くなります。
さらに、もし増税で将来の税率が30%になっていた場合、特定口座の手残りは約785万円まで減り、その差は130万円以上に広がります。「早く移すほど、将来の増税から守られる資産が増える」のです。
3. 残りの新NISA枠1,000万円をどう埋めるべきか?
相談者様は残り1,000万円の枠があり、毎月10万円の積立を検討されています。これについても、「特定口座を売却して、できるだけ早く埋める」ことが最適解です。
なぜ「10年」より「短縮」が良いのか
投資の格言に「相場にいる時間が長いほど有利」という言葉があります。毎月10万円で10年かけて埋めるよりも、特定口座の売却分を成長投資枠に充当し、例えば「年360万円(つみたて枠120万+成長枠240万)」のペースで5年弱で埋めてしまう方が、期待収益は高くなります。
特に45歳という年齢は、定年(60〜65歳)まであと15〜20年しかありません。「運用の後半戦」で非課税枠をフル活用できている状態を作るためには、投資のスピードを上げるべき時期なのです。
推奨される具体的な移行スケジュール
- 1年目(今すぐ):特定口座の400万円のうち、240万円分を売却して新NISA「成長投資枠」へ一括投入。あわせて、月10万円(年間120万円)を「つみたて投資枠」で継続。これだけで年間360万円の枠を消化。
- 2年目:特定口座の残り160万円+αを売却して「成長投資枠」へ。同様に月10万円(年間120万円)を「つみたて枠」へ。
- 3年目以降:余剰資金から月10万円以上のペースで、最短で1,800万円の生涯投資枠を埋め切る。
4. 注意点と「病気・イベント」への備え
この戦略を実行する上で、1点だけ注意すべきは「現金(キャッシュ)の余裕」です。相談者様は「病気にならなければイベントはない」とおっしゃっていますが、以下の点を確認してください。
生活防衛資金は確保されているか?
特定口座の400万円を全て投資に回すのは、あくまで「生活防衛資金(生活費の6ヶ月〜1年分)」が別途、現金で確保されていることが前提です。もし、400万円が貯金のすべてであるならば、全額移し替えるのではなく、100万円程度は現金で持っておく勇気も必要です。
売却のタイミングについて
「今、相場が高いから暴落してから買いたい」という心理が働くかもしれません。しかし、特定口座から新NISAへの移し替えは「同じ商品を売って買い直す」だけであれば、市場の上下は関係ありません。売った時の価格が安ければ、買う時の価格も安いからです。むしろ、「いつ売るか」を悩んで時間を浪費する方が、非課税のメリットを享受できる期間が短くなるため、損失と言えます。
5. まとめ:45歳・共働き世帯の最適戦略
2026年、金融所得課税の増税議論が進む中で私たちが取るべき最善の行動は、「課税される場所から、課税されない場所へ、一刻も早く資産を脱出させること」です。
- 特定口座の400万円:2年かけて新NISA成長投資枠へ全額移行。
- 増税への備え:NISA枠を埋めることで、将来の税率アップを完全に無力化。
- 埋めるスピード:毎月10万円の積立に加え、特定口座の売却資金を充当し、10年と言わず最短(4〜5年)での枠埋めを目指す。
45歳は、まだ20年以上の運用期間が確保できる「投資のゴールデンタイム」です。今、含み益に対する税金を「将来への保険料」と割り切って支払うことで、65歳以降の老後資金を盤石なものにしましょう。
※本記事は2026年2月12日現在の税制・制度に基づいています。投資の最終判断は自己責任で行ってください。



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