「自民党が勝って得をするのは一部の富裕層や大企業だけではないか?」という疑問は、選挙のたびに繰り返される議論です。しかし、2026年現在の政治情勢を見ても、自民党は依然として政権の中枢を担っています。
なぜ、多くの有権者は「自分たちの生活が苦しくなっている」と感じながらも、自民党に一票を投じるのでしょうか。本記事では、プロのファクトチェッカーの視点から、「金持ちだけが得をする」という説の真偽を検証し、有権者が自民党を選ぶ背景にある複雑な要因を徹底解説します。
1. ファクトチェック:「自民党は金持ちだけを優遇している」は本当か?
まず、前提となる「自民党=金持ち優遇」という言説を客観的なデータで検証します。
法人税と消費税の相関関係
批判の矢面に立つのが、法人税の引き下げと消費税の増税です。過去数十年の推移を見ると、法人税率は段階的に引き下げられる一方で、消費税は上昇してきました。これが「企業の利益を守るために庶民に負担を強いている」という認識の根拠となっています。
所得再分配機能の現状
一方で、自民党政権下でも所得税の累進課税や、高額所得者に対する社会保険料の負担増など、一定の所得再分配は行われています。また、2024年から2025年にかけて実施された定額減税や、低所得世帯への給付金措置などは、必ずしも「金持ち優遇」とは言い切れない側面もあります。しかし、「中間層の没落」が進行しているという統計事実は否定できず、これが「金持ちだけが得をしている」という実感に繋がっています。
2. なぜ「金持ちではない人」も自民党に入れるのか?
投票者のボリュームゾーンは、富裕層ではなく普通の中間層や高齢層です。彼らが自民党を選ぶ理由は、単なる「得」だけではありません。そこには5つの大きな構造的理由があります。
① 「消去法」としての選択(TINAの原則)
政治学でよく言われる「TINA(There Is No Alternative:他に選択肢がない)」の状態です。野党第一党をはじめとする反対勢力が、政権担当能力(外交、経済政策、安全保障)において有権者の信頼を勝ち取れていないという現実があります。2009年の民主党政権交代時の混乱を記憶している層にとって、「不満はあるが、自民党の方がまだマシ(カオスにならない)」という判断が働いています。
② 強固な「組織票」と「互助会」の仕組み
自民党の強さは、業界団体や農協、建設業界といった職能団体との強固なネットワークにあります。これらの団体に所属する人々にとって、自民党が勝つことは「業界の予算確保」や「雇用の維持」に直結します。これは個人の「金持ちになりたい」という欲求ではなく、「今の生活基盤を守る」という防衛的な投票行動です。
③ シルバー民主主義の影響
日本の選挙における最大のボリュームゾーンは高齢者です。自民党は、年金制度の維持や医療制度の急激な変更を避ける傾向にあります。若年層から見れば「未来への投資を削っている」と映りますが、現在の受給世代にとっては「現状維持」こそが最大の利益であり、その守護神として自民党が選ばれます。
④ 外交・安全保障への信頼
2026年現在、緊迫する東アジア情勢や不安定な国際社会において、日米同盟を基軸とした自民党の外交手腕を評価する層は一定数存在します。経済的に損得を感じていなくても、「国としての存立」という大きな視点で自民党を選択する有権者が多いのも事実です。特に、経済安全保障やサイバーセキュリティ対策において、野党の具体策が見えにくいことが自民党への消極的支持を支えています。
⑤ 景況感の「底堅さ」という幻想と実態
株価が過去最高値を更新し続ける中で、新NISAなどを通じて投資を始めた中間層にとって、株価を支える自民党の経済政策(アベノミクスの継承)は、資産防衛の手段として機能しています。実質賃金が追いついていないという課題はありつつも、「株価が下がればもっと悲惨なことになる」という恐怖心が、現状維持を選択させる動機となっています。
3. 2026年の最新視点:変わる民意と変わらない構造
2026年2月現在の状況を整理すると、以下の新しい変化が見られます。
格差固定化への強い反発
「金持ちだけが得をする」という感情は、単なる嫉妬ではなく、教育格差や世代間格差の固定化に対する危機感から来ています。近年の世論調査では、自民党支持層の中でも「党の裏金問題」や「物価高対策」への不満が噴出しており、以前のような「盤石な支持」ではなく、「渋々の支持」へと変化しています。
「第3の選択肢」の台頭
自民党でもなく、既存の野党第一党でもない、改革を掲げる第3勢力が都市部を中心に票を伸ばしています。これにより、これまでの「自民党1強」の構造にひびが入り始めています。それでもなお自民党が勝ち残るのは、地方における圧倒的な地盤と、地方交付税を背景とした地方経済への影響力が依然として強力だからです。
4. 結論:私たちはどう向き合うべきか
「自民党が勝って得をするのは金持ちだけ」という意見は、ある側面(税制や格差の拡大)では正しいかもしれませんが、投票行動の全体像を説明するには不十分です。有権者の多くは、「積極的な支持」ではなく、「現状の崩壊を避けるための消極的な選択」として自民党を選んでいます。
もし、この現状を変えたいと考えるのであれば、以下の3点が重要になります。
- 対案の精査: 批判だけでなく、具体的な経済成長と再分配のモデルを提示している勢力はどこかを見極める。
- 投票率の向上: 組織票に頼らない一般有権者の投票率が上がれば、自民党も「特定の団体」以外を向かざるを得なくなります。
- 情報のアップデート: 「昔からのイメージ」ではなく、2026年現在の各党の具体的な政策(特に子育て支援、エネルギー政策、減税策)を比較する。
政治は「誰か一人が得をするゲーム」ではなく、限られた資源をどう分配するかの意思決定プロセスです。私たちが「なぜ彼らが選ばれるのか」という構造を理解することは、より良い選択をするための第一歩となります。
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