ホンダの名車、CB400SF(NC31)の中でも、ブレンボ製キャリパーなどを標準装備した「Version S」。2026年現在、この車両は製造から30年近くが経過する「ネオクラシック」の域に達しています。絶版車としての価値が高まる一方で、経年劣化による原因不明の不調に悩むオーナーも少なくありません。
特に今回のような「8,000回転以上での息継ぎ・パラパラ音」という症状は、キャブレター(吸気系)と点火系(電装系)のどちらにも原因が考えられる、NC31特有の難解なトラブルの一つです。本記事では、プロの視点から最新の知見を交え、解決に向けた診断フローを徹底解説します。
質問者様はすでにキースター(燃調キット)を使用し、メインジェット(MJ)やパイロットジェット(PJ)を標準の「S」に変更されています。しかし、ニードルを戻すことで改善したという経緯から、現状のセットアップにはまだ微調整の余地があります。
高回転域で音が途切れる、あるいは「パラパラ」という乾いた音がして加速が止まる場合、最も疑われるのは「高回転時のガソリン供給不足(燃料希薄)」です。8,000回転以上はMJが支配する領域ですが、以下の点を確認してください。
質問者様が懸念されている「メーター交換の痕跡」は、非常に重要なヒントです。NC31、特にVersion Sを含む後期モデルには、メーター内に「スピードリミッター」の回路が組み込まれています。
通常、180km/h付近で点火カットが入る仕組みですが、メーター内の基板故障や、社外メーターへの交換に伴う配線処理の不備により、特定の回転数や車速で点火を間引いてしまう不具合が多発しています。
8,000回転という数字は、ギヤポジションによってはリミッターが干渉し始める領域と重なることがあるため、以下のチェックが必要です。
2026年現在、NC31の純正CDIは内部のコンデンサが寿命を迎えている個体がほとんどです。8,000回転までは正常に回り、そこから火花が弱くなる、あるいは途切れる症状は、CDIのパンク初期症状に酷似しています。
CDIが故障すると、高回転での進角(火花を飛ばすタイミングの調整)ができなくなります。
「冷間時は回るが、エンジンが温まると8,000回転でボコつく」という症状があれば、ほぼ間違いなくCDIまたはイグニッションコイルの熱害によるパンクです。
高回転域では点火回数が激増するため、コイルが弱っているとリーク(火花漏れ)を起こしやすくなります。夜間にエンジンをかけ、タンク下から火花が漏れていないか視認するのも手です。
Version Sには、標準モデルとは異なる点火マップや仕様が存在します。以下の盲点も確認してください。
ホンダ車全般の持病ですが、レギュレーターが故障して過電圧(15V以上)が流れると、CDIが保護動作に入ったり、誤作動を起こして失火の原因になります。テスターでバッテリー端子の電圧が、回転を上げた際に異常に高くなっていないか確認してください。
キースターで燃調を合わせる際、二次エアを吸っていると迷宮入りします。インシュレーターのひび割れだけでなく、エアクリーナーボックスとキャブの結合部もしっかり確認してください。
現状の症状から判断すると、以下の順序での点検を強く推奨します。
特に「メーター交換跡」がある場合、電気信号のノイズや誤作動が、キャブの不調に見えてしまっているケースが非常に多いです。まずは「電気的なリミッターがかかっていないか」を切り分けることが、完調への近道となります。