日本の政治の行方を決める最も重要なイベントの一つが、衆議院議員総選挙です。しかし、「小選挙区」と「比例代表」の違いや、落選したはずの候補者が当選する「復活当選(惜敗率)」の仕組みは、非常に複雑で分かりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。
2024年10月に行われた第50回衆議院議員総選挙では、政治資金問題を背景に「重複立候補の制限」などが大きな話題となりました。2026年現在、次なる解散・総選挙への関心が高まる中で、あらためて有権者が知っておくべき選挙制度の基本と最新の状況をプロの視点で分かりやすく解説します。
現在の衆議院選挙(定数465議席)は、「小選挙区比例代表並立制」という制度を採用しています。有権者は投票所で、2枚の投票用紙に記入することになります。
日本全国を289の選挙区に分け、1つの選挙区から最も得票数の多かった1名だけが当選する仕組みです。候補者個人の名前を書いて投票します。
全国を11のブロック(北海道、東北、北関東、南関東、東京都、北陸信越、東海、近畿、中国、四国、九州)に分け、政党の得票数に応じて議席を配分する仕組みです。政党名を書いて投票します。
この2つの制度を同時に行うことで、「政権の安定性」と「多様な民意の反映」の両立を目指しているのが日本の衆議院選挙の特徴です。
ニュースなどで「小選挙区で落選しましたが、比例で復活当選しました」という言葉を聞くことがあります。これが、いわゆる「復活当選」です。正式には、小選挙区と比例代表の「重複立候補」という制度に基づいています。
多くの候補者は、自分の住む「小選挙区」と、その地域を含む「比例代表ブロック」の両方に同時に立候補しています。小選挙区で負けても、比例代表の名簿に名前があれば、救済される可能性があるのです。
比例代表で誰を優先的に当選させるかは、各政党が決める「名簿順位」によります。しかし、多くの政党は小選挙区の候補者を「同順位(例:全員1位)」に設定しています。ここで使われるのが惜敗率です。
惜敗率 =(自分の得票数)÷(その選挙区で当選した人の得票数)× 100
例えば、Aさんが9万票で落選し、当選者のBさんが10万票だった場合、Aさんの惜敗率は90%となります。この数値が高い(=当選者に肉薄した)順に、比例代表での当選が決まります。
2024年の第50回衆議院選挙では、自民党のいわゆる「裏金問題」に関与した議員に対し、党が重複立候補を認めない(比例への掲載なし)という厳しい措置をとりました。その結果、小選挙区で敗れた有力議員が次々と落選し、復活当選の制度が「政治的な責任追及の手段」としても注目されました。2026年現在も、この「政治とカネ」の問題に伴う制度運用の厳格化は、各政党の大きな検討課題となっています。
比例代表の議席配分には「ドント方式」という計算手法が用いられます。各政党の得票数を「1, 2, 3…」と整数で割っていき、その商(答え)が大きい順に議席を割り振る方法です。
【例:定数3のブロックで、A党が600票、B党が400票、C党が250票の場合】
1で割る:A(600), B(400), C(250)
2で割る:A(300), B(200), C(125)
3で割る:A(200), B(133), C(83)
上位3つは:(1)A党600, (2)B党400, (3)A党300。
結果:A党2議席、B党1議席、C党0議席となります。
この方式は、大政党にやや有利に働く傾向がありますが、完全な死票を防ぐ仕組みとして定着しています。
復活当選制度には、長年「ゾンビ議員」といった揶揄や批判が根強くあります。主な論点は以下の通りです。
2026年2月現在、次回の総選挙に向けて「一票の格差」の是正(区割り変更)や、インターネット投票の導入検討などが議論されています。また、2024年選挙で見られたように、「誰に重複立候補を認めるか」という政党内のルールが、結果に多大な影響を及ぼすようになっています。
衆議院選挙の仕組みを理解することは、自分の1票がどのようなルートを辿って議席に変わるかを知ることです。
制度は複雑ですが、その根底にあるのは「いかにして国民の声を正確に国会に届けるか」という試行錯誤の歴史です。次回の選挙に向けて、この仕組みを念頭に候補者や政党をチェックしてみてはいかがでしょうか。
※最新の公示日や投票方法については、必ず総務省の公式サイトや自治体の選挙管理委員会からの通知をご確認ください。