求人サイトやSNSで見かける「業務開始前の講習10日間、1日1万円支給」という条件。一見すると手厚い研修制度に見えますが、実はここには「労働基準法」や「フリーランス保護法」に関わる重要な注意点が隠されています。
2026年現在、働き方の多様化が進む一方で、業務委託を装った不適切な契約トラブルも増加しています。本記事では、プロのファクトチェッカーが最新の法規制に基づき、皆様の疑問を徹底解説します。
1. 報酬は「毎日」貰えるのか、それとも「まとめて」か?
結論から申し上げますと、「会社規定の給与(報酬)支払日に準ずる」のが一般的です。募集要項に「1日1万円」と書かれていても、その日に現金で手渡されるケースは稀です。
一般的な支払いサイクル
多くの企業では、以下のようなサイクルを採用しています。
- 月払い:月末締めの翌月15日払い、など。
- 週払い:日曜締めの翌週金曜払い、など。
もし募集要項に「日払い可」と明記されていない場合は、他の従業員と同じサイクルで銀行振込される可能性が高いでしょう。また、「10日間の全日程を終了した後の最初の支払日」にまとめて振り込まれるケースが最も一般的です。「毎日その場で現金が欲しい」と考えている場合は、必ず事前に確認が必要です。
2. 途中で辞めた場合、報酬を「返す」必要はあるのか?
最も不安を感じる「返金規定」についてですが、これには明確な法的ルールが存在します。
労働契約(雇用)の場合
もしあなたが「アルバイト」や「契約社員」として雇用されている場合、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)により、「途中で辞めたから報酬を返せ」「違約金を払え」といった契約を結ぶことは禁止されています。たとえ10日間のうち3日で辞めたとしても、実施した3日分の報酬(3万円)を受け取る権利があり、それを返還する義務はありません。
業務委託契約の場合
2024年11月に施行され、2026年現在も厳格に運用されている「フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」が重要になります。
「講習を受けたら報酬を支払う」という契約において、既に提供した役務(受講)に対して、後から返金を求める行為は、信義則に反し、不当な不利益を課すものとして無効とされる可能性が非常に高いです。
ただし、悪質なケースでは「研修費を会社が立て替えている」という形式にして、早期退職時に「借金の返済」として請求してくる手口もあります。しかし、これも実態が労働であれば公序良俗に反し無効です。もし「返せ」と言われたら、即座に労働基準監督署や弁護士に相談すべき案件です。
3. 講習の時点で「業務委託契約」は成立しているのか?
「業務開始前の講習」という名目であっても、講習に参加した時点で何らかの契約関係(契約の成立)は発生しています。
「業務委託」か「雇用」かの判断基準
実は、企業側が「これは業務委託だ」と主張していても、法律上は「雇用」とみなされるケースが多々あります。以下の条件に当てはまる場合、それは「雇用(労働契約)」です。
- 場所と時間の拘束:「〇時〜〇時にこの会場に来い」と指定されている。
- 指揮命令:講習の内容や手順が厳格に決められており、拒否権がない。
- 不可代替性:自分以外の誰かが代わりに受けることができない。
講習が強制であれば、それは「労働時間」です。2026年現在の判例でも、形式が業務委託であっても、実態として会社から指揮命令を受けていれば、労働基準法が適用されます。つまり、講習初日からあなたは「労働者」としての保護を受ける権利が発生していることになります。
4. 注意すべき「求人詐欺」のチェックリスト
今回のような好条件の講習には、一部で「求人詐欺」や「マルチ商法」の入り口が混ざっていることがあります。以下の項目に当てはまる場合は注意してください。
① 講習後に「機材代」や「入会金」を請求される
「講習は10万円分出すが、業務に使うPCやソフトを20万円で買ってもらう」といったパターンです。これは典型的な「求人商法」です。
② 契約書を事前に見せない
「講習が終わってから契約書を書く」と言われる場合、講習中の時給が最低賃金を割っていたり、法外なペナルティ条項が隠されていたりすることがあります。必ず「講習開始前」に書面(または電磁的記録)で条件を貰いましょう。
③ 連絡先が不明瞭
会社の住所がバーチャルオフィスであったり、担当者とSNS(LINE等)だけでしか繋がっていない場合は、報酬未払いのまま逃げられるリスクがあります。
まとめ:自分の身を守るために
2026年2月現在、人手不足を背景に「高額な研修手当」を謳う求人は増えていますが、「辞めるなら返せ」というルールは日本の労働法上、基本的に認められません。
- 支払いは「月払い」が基本。即日支給は稀。
- 途中で辞めても、実施した分の報酬を返す義務はない。
- 講習に参加した時点で、実態は「労働契約」に近い。
もし少しでも「怪しい」と感じたら、その募集主の企業名を厚生労働省の「労働基準関係法令違反に係る公表事案」リストで検索するか、フリーランス・トラブル110番などの公的窓口を活用してください。



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