初めて宅建試験に挑戦し、自己採点が34点または35点に収まったとき、多くの受験者が抱くのは「今年の難易度ならどちらに転ぶのか」という切実な不安です。
各予備校の解答速報にわずかなズレが生じるのは、問題文の解釈や選択肢の評価基準、速報時点での慎重さの差によるもので、毎年起こり得る現象です。
一方で、最終的な合格基準点は相対評価的に設定されるため、受験者全体の出来や科目ごとの難易度の波に左右されます。
今年は権利関係の思考問題化、法改正の反映、個数・組合せ問題の比率、過去問踏襲度の低さなどが体感難易度を押し上げた要因と見られ、ボーダーが絞り込みにくい年と言えるでしょう。
本稿では、34〜35点帯の受験者が押さえるべき判断軸、予備校予想と実際の差の傾向、そして発表までの過ごし方を整理します。
34点・35点帯の「合否の揺らぎ」をどう評価するか
まず押さえたいのは、合格基準点は絶対値ではなく「その年の難しさと受験者の出来」に応じて決まるという原則です。
同じ34点でも易化年なら届かず、難化年なら射程内ということが起こり得ます。
今年の出題構成を振り返ると、権利関係は判例理解と条文趣旨の応用を要する肢が増え、従来の頻出論点でも選択肢の書きぶりが一段ひねられていました。
また、宅建業法は一見サービス問題に見せながら周辺知識を問う設問があり、税・価格は基礎と時事の横断が必要でした。
こうした年は、上位層でも取りこぼしが増えるため、ボーダーは例年より下がる可能性が出ます。
他方、マークミスや読み違いの影響が例年よりも大きくなるため、総得点が同水準でも「確信度の高い正答割合」が鍵になります。
自己採点の際は、単に正誤だけでなく「根拠が明確に説明できる正答」「類推で当てた正答」を分けて記録すると、ボーダーが動いた場合の安全度合いを冷静に把握できます。
34点は難化年で射程圏、35点は揺れ幅の中でやや有利、というのが一般的な見立てになります。
予備校別速報がズレる理由と「最終答え合わせ」の作法
速報に違いが出る主因は三つあります。
一つ目は、問題文の文理解釈の差です。
特に否定・二重否定、但し書き、例外条項の扱いで結論が割れることがあります。
二つ目は、最新判例や通達の反映度合いです。
速報段階で一次資料を当てにいくか、過去問の出題趣旨に寄せるかで判断が分かれます。
三つ目は、設問ミスや不適切肢の疑義がある場合の対応です。
各校は再検討の注記を付けることがありますが、最終的な公式正解と一致しない年もあります。
したがって、自己採点は「複数校の一致点を軸に、相違点は保留でメモ」にするのが賢明です。
相違が出た箇所は、条文・典型論点・判例要旨のいずれで判断しているのかを自分の言葉で要約しておきましょう。
この作業は、合格・不合格いずれの結果でも次に直結する資産になります。
また、マークシート転記のケアレスと見直し時間の配分を振り返り、次回に向けた「時間設計のプロトコル」(例えば権利20分・業法25分・法令上の制限15分・税他10分・見直し10分のような枠)を作ると、精神的な揺れを小さくできます。
過去の「予想合格点」と実際の合格点はどの程度一致するか
一般に、大手予備校のボーダー予想は最終的な合格基準点と±1点程度に収まる年が多い一方で、難易度の体感と得点分布が乖離した年、あるいは一部の設問で正解変更や採点除外が生じた年には±2点程度のズレが見られます。
一致度を高める鍵は母集団の規模と回答の精度で、母集団が大きい速報は極端な外れ値の影響を受けにくい傾向があります。
ただし、自己採点提出者は「比較的手応えがある層」に偏りやすく、統計上の上振れバイアスが入る可能性も否定できません。
このため、予想の幅を狭く断定するよりも、レンジで捉えるのが現実的です。
例えば「32〜35のレンジで落ち着く見込み、中心は33〜34」といった示し方がなされるとき、34点は合否境のコインフリップ、35点は一歩優位、31点以下は逆転に採点調整等の特殊要因が必要、といった読みになります。
あなたの34/35点という位置づけは、まさにこの「レンジの中心〜上限付近」にあり、最終発表まで希望を持つに足るポジションと言えます。
合格発表までにすべきこと:確認・保全・次手の準備
最終結果を左右しかねないのが、マークミスと受験番号・氏名欄の記入不備です。
当日の行動を振り返り、転記プロセスに不自然な空白がなかったかを思い出しておきましょう。
また、再現答案は設問番号ごとの選択肢だけでなく、迷った肢、切った根拠、時系列の思考も書き残すと、予想が外れた場合のギャップ分析が容易になります。
仮に不合格だったとしても、弱点が「知識不足」なのか「問題処理手順」なのか、「時間管理」なのかで対策は全く異なります。
知識なら頻出論点の優先度再配置、処理手順なら肢の潰し方テンプレ化、時間管理ならブロックタイムとスキップ基準の明文化が有効です。
一方で合格の可能性が十分ある35点帯の方は、登録実務講習の時期や勤務先の登録支援体制を先に下調べしておくと、発表後の動きがスムーズです。
精神面では、発表までの情報摂取を一日一回の総括に限定し、闇雲なSNS巡回を避けることが心の消耗を防ぎます。
「やるべき確認はして、あとは整えて待つ」のが最適解です。
来年に持ち越す場合の学習設計:34・35点からの“1〜3点上積み”
今年が初受験で34/35点に到達しているなら、合格圏までの距離は戦略再設計で届く範囲です。
鍵は「捨てる勇気」と「取りきる型」を明確に分けること。
具体的には、業法の正解率を安定して9割に乗せる設計、権利関係は“条文・判例の要旨→典型ひっかけの潰し方→過去問横断”の三層構造で再学習、法令上の制限は図表化と単位換算の即答訓練、税・価格は出題パターンの定型化により、時間当たりの期待値を最大化します。
演習では「正答までのプロセス速度」を指標化し、各肢にかける秒数の目安を持つと効果的です。
例えば、業法の基本肢は一肢10〜15秒、迷い肢でも30秒、45秒を超えたら一旦保留にして次へ進む、といったルール化です。
模試は最低3回、うち1回は“時間短縮モード”(本試験より5分短く解く)で実施し、圧縮下でも取りきれる筋力を養います。
最後に、直前期は「取り切るリスト」と「捨て肢条件」を紙一枚に集約し、当日の迷いをなくすことが上積みの最短ルートです。
まとめ:今年の宅建ボーダーと34/35点の立ち位置
今年の宅建は、権利の応用度、業法の周辺知識化、個数問題の増加などにより体感難易度が高まり、ボーダーは例年並み〜やや低下のレンジで推移する可能性があります。
この前提に立つと、34点は合否が割れる典型的なライン、35点は有利側に位置するラインです。
予備校予想はおおむね±1点程度に収まる年が多いものの、設問の見解差や採点上の調整があると±2点のズレもあり得ます。
したがって、複数速報の一致点を信頼しつつ、相違点は保留して再現答案に根拠つきで記録しておくのが賢明です。
発表までの時間は、マークの不備の自己点検、次の一手の準備、情報摂取の整理に充てましょう。
合格なら速やかに登録実務講習や実務の段取り、不合格なら弱点の性質に応じて学習設計をアップデートすれば、次は1〜3点の上積みで確実に到達できます。
いずれに転んでも、今回積み上げた理解は必ず力になります。
焦りを整理し、準備を整え、結果を迎えにいきましょう。
コメント