世界陸上やオリンピックなどの国際大会が開催される国立競技場は、その独特なデザインが常に注目を集めています。特に観客や視聴者が気になるのが「屋根の中央部分が開いているのはなぜか」という点です。大規模な競技場では、天候の影響を最小限に抑えるため可動式の屋根が採用されるケースもありますが、国立競技場の場合は必ずしもそうではありません。設計の段階から「自然との共生」を重視した思想が盛り込まれており、その結果として現在の形になっています。本記事では、国立競技場の屋根構造の特徴や、雨天時の対応方法について詳しく解説していきます。
まず大前提として、国立競技場の屋根は中央が開閉する仕組みを持っていません。つまり、雨が降った場合でも屋根が閉じることはなく、常に開いたままの構造となっています。設計時にはコストや維持管理の観点に加え、スタジアム内に自然光や風を取り込むことを重視するコンセプトが採用されました。そのため、観客席の大部分は庇のように屋根で覆われているものの、グラウンド部分とスタンドの一部は天候の影響を直接受けることになります。これにより、屋外競技場としての開放感を保ちつつ、近代的なデザインを実現しているのです。
国立競技場の設計において重要なテーマとなったのが「自然との調和」です。屋根の中央を開けることで、スタジアム内に日光や風を取り入れ、四季折々の気候を体感できるように工夫されています。また、芝の育成に必要な自然光を確保することも目的のひとつです。閉じた空間では人工照明や換気設備に依存せざるを得ませんが、開放型の構造であれば自然エネルギーを最大限活用できます。このような思想は、環境負荷を抑え、持続可能な運営を目指す現代的なスタジアム建築の一例といえるでしょう。
屋根が閉まらない構造であるため、雨天時にはグラウンドや一部観客席が濡れることは避けられません。しかし、設計段階で観客への配慮も行われています。大半の客席は屋根の庇で覆われており、通常の雨であれば観戦に大きな支障はありません。また、屋根の角度や排水システムによって雨水が効率的に処理されるよう工夫されています。ただし、強風を伴う雨や豪雨の場合には、観客がレインコートや傘に頼る必要が出てくるのも事実です。これは完全屋内型のドーム球場と異なる点であり、屋外競技場ならではの特徴といえるでしょう。
世界のスタジアムを見渡すと、ドーム型の完全屋内型施設もあれば、国立競技場のように開放感を重視した設計もあります。例えば、日本国内では東京ドームや福岡PayPayドームが完全に屋根で覆われ、天候に左右されない環境を提供しています。一方で、国際大会に使用される陸上競技場は屋外仕様が多く、国立競技場のように自然光を取り入れるデザインは珍しくありません。これにより、観客は競技だけでなく、その日の天候や自然の移ろいも含めて体験することができます。まさに「スポーツと自然の共演」がコンセプトに据えられているのです。
国立競技場の屋根は開閉式ではなく、中央部分は常に開いた構造です。これは自然光や風を取り込み、環境と調和するスタジアムを目指した設計思想の表れといえます。雨天時にはグラウンドや一部観客席が濡れるリスクはありますが、多くの席は屋根で守られており、観戦の快適さは一定程度確保されています。完全な全天候型ではないからこそ、自然の中でスポーツを楽しむ特別な臨場感を味わえる点が魅力です。今後も国立競技場は、その独自のデザインと機能性によって、多くの人々に感動を与え続けるでしょう。