高校野球の舞台で注目を集める日大三高の近藤選手。
彼の試合中の態度に対して、SNSではさまざまな意見が飛び交っています。
とくに抗議の場面で見せた「ニヤリ」とした表情が物議を呼び、「態度が悪い」「高校生らしくない」といった批判が相次いでいます。
一方で、その表情や姿勢に対する意見がエスカレートし、「顔がキモい」「存在が無理」といった人格否定や容姿攻撃に発展するケースも見られます。
高校球児という立場を忘れ、過剰な誹謗中傷が当たり前になっている今、私たちはどこまでが正当な批判で、どこからが「言葉の暴力」なのかを見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
問題の発端は、試合中のあるシーンにおける近藤選手の表情や仕草でした。
アウトかセーフか微妙な判定の際、審判に向けて軽く笑うような表情で抗議する様子が放送され、多くの視聴者がその態度に違和感を覚えました。
「挑発的に見える」「ふざけているようだ」といった声が上がり、X（旧Twitter）やコメント欄は瞬く間に荒れ始めました。
高校野球は「ひたむきさ」「礼儀正しさ」が評価されやすい競技であるため、そのギャップが大きなインパクトとして受け取られたことは理解できます。
とはいえ、あくまで一瞬の表情にすぎず、それだけで彼の人間性すべてを否定するのは短絡的すぎるとも言えるでしょう。
近藤選手の態度に対する意見が広がる中で、問題となっているのはその批判が徐々に個人攻撃へと変化していった点です。
「態度が悪い」という意見を通り越し、「顔が気持ち悪い」「テレビに映すな」といった容姿に関する罵倒が多く見受けられます。
これは、正当な批判ではなく、明らかに誹謗中傷に分類される言葉です。
SNSでは、正義感に駆られた批評が過激化しやすく、「自分は悪を正している」という勘違いのもと、他人を傷つけることが正当化されがちです。
しかし、匿名の言葉の刃は、当人にとって計り知れない傷を残す可能性があることを忘れてはなりません。
多くの人が忘れがちですが、高校野球に出場している選手たちは、あくまで10代半ばの「子どもたち」です。
その中でプレッシャーと緊張に晒されながら、全力でプレーしている姿勢は称賛に値します。
近藤選手の一連の振る舞いが大人としては未熟に見えるかもしれませんが、それは成長途中だからこその姿でもあります。
私たち大人が、その過程に対して一方的な非難ばかりを浴びせることは、本来彼らの成長機会を奪ってしまうリスクにもつながります。
むしろ「こうした態度は改善した方が良いよね」と冷静に伝えることで、彼らにとってプラスになるのではないでしょうか。
誰もが意見を発信できる今の時代、感情的な発言が拡散されるのは一瞬です。
特に高校野球のような注目度の高いイベントでは、わずかな表情や言動が切り取られ、バズる現象も少なくありません。
しかし、それを見た誰かが傷つくという現実を考えたとき、発信する側にも一定のモラルや責任が求められます。
単なる「炎上」に便乗するのではなく、「これは本当に言うべきことなのか」「この言葉は相手を傷つけないか」と自問自答することが、SNSを使う大人の役割とも言えるでしょう。
見守る力、冷静な視点、それが子どもたちの未来を支える礎になるのです。
近藤選手に限らず、注目を集める若者たちがSNSで批判される機会は増え続けています。
態度への指摘は必要な場合もあるでしょう。
しかし、容姿や人格に対する攻撃にまでエスカレートしてしまえば、それは単なるいじめや差別に近いものです。
誰かを正すつもりの言葉が、いつの間にか相手を追い込む凶器になる――そんな構造に、私たちは敏感になるべきです。
意見と暴言を分けるラインを見極め、未来ある若者たちを建設的に支える姿勢を、いま大人たちが取り戻すべき時かもしれません。