2025年に沖縄北部で開業予定の大規模テーマパーク「ジャングリア沖縄」。南国の自然を生かした新感覚アトラクションやリゾート型施設として注目を集めていますが、一方で多くの懸念も囁かれています。建設費・維持費・人件費など、莫大なコストがかかるにもかかわらず、地方立地という不利な条件や観光業全体の不安定さを理由に、「失敗したら一気に廃墟化するのでは」との声も少なくありません。沖縄の未来に希望をもたらすのか、それとも危うい賭けなのか。その実情と課題を冷静に考察してみましょう。
ジャングリア沖縄の開発には、数百億円規模の巨額な建設費が投じられています。これは建物の建設やアトラクションの設置に限らず、インフラ整備、道路アクセス、電力供給など周辺環境の整備費も含まれています。さらに、開業後は清掃、メンテナンス、人件費、水道光熱費などの維持費が常にかかり続けます。特に沖縄は高温多湿な環境で、建物や設備の劣化が早いため、修繕や補修にも予想以上の費用が必要になるでしょう。これらの費用を回収するには、継続的に多くの観光客を呼び込む必要がありますが、それがどこまで実現可能なのかは未知数です。
テーマパークの運営には、多くのスタッフが欠かせません。アトラクションの管理、接客業務、飲食・物販、警備、清掃など、様々な職種の人材が必要です。しかし、沖縄北部は人口が少なく、若年層の定住率も低いため、地元だけでスタッフを確保するのは困難が予想されます。都市部からの人材確保には住居の用意や交通費の負担も必要となり、コストはさらに膨れ上がります。さらに、全国的に人手不足が深刻化する中、サービス業における人材の確保は年々難しくなっており、採用しても定着しにくいという課題にも直面します。
ジャングリア沖縄が位置する沖縄北部は、観光の中心地である那覇や南部のリゾートエリアから遠く、アクセスの悪さが懸念されています。車での移動が前提となる地域であり、レンタカー利用者にとっても負担が大きく、観光ルートから外れることで「わざわざ行く」動機が必要となります。また、沖縄観光の季節的変動も激しく、台風シーズンやオフシーズンには来場者が極端に減少する可能性があります。通年安定して集客できる仕組みがなければ、収益が維持できず、数年での赤字転落も現実味を帯びてきます。
新しいテーマパークが知名度を獲得し、訪問動機を与えるには、強力なプロモーションが欠かせません。テレビCM、SNS広告、インフルエンサーとの連携など、初期の注目を集めるための広告費だけでも莫大です。開業当初は話題性で集客が見込めても、リピーターを増やし続けるには定期的なキャンペーンやイベントの開催、顧客体験のアップデートが求められ、それにも継続的な予算が必要です。これが安定収益の出ない中で続くと、企業体力が削られていき、資金ショートという最悪の事態にもつながりかねません。
日本には、かつて華々しくオープンしたにもかかわらず、数年で閉鎖に追い込まれたテーマパークが数多く存在します。経営が立ち行かなくなると、施設の維持も困難になり、取り壊しにも莫大な費用がかかるため放置されがちです。結果として廃墟と化し、地域にとっては「負の遺産」となります。沖縄の貴重な自然に囲まれた場所に大型の廃墟が残されることになれば、観光イメージにも悪影響を与えかねません。現地の住民や自治体にとっても、計画段階で慎重な判断が求められます。
ジャングリア沖縄は、沖縄の新たな観光資源として期待される一方で、現実的な課題も数多く抱えています。建設・維持コストの重さ、人材不足、立地の不利、宣伝費の持続性、そして失敗時のリスク——それぞれが深刻な問題です。こうした要素を見落としたまま進めてしまえば、過去に失敗した多くの地方型テーマパークと同じ道をたどる可能性も否定できません。持続可能な観光、地元との連携、段階的な投資回収など、冷静かつ計画的な運営戦略がなければ、華やかなスタートも長くは続かないでしょう。夢のテーマパークが現実の重みに耐えられるのか、今後の展開を注視する必要があります。