近年、TikTokを中心に爆発的に拡散しているネットミームのひとつに「ナルトダンス」があります。
中国の若者5人が、人気アニメ『NARUTO -ナルト-』の火影軍団風の衣装を着て、謎めいたリズムで踊る映像が元ネタとされ、視聴者の間でじわじわと人気を集めました。
当初は中国発のBGM「一笑江湖」などが多く使われていたこのミームですが、現在では日本の人気ロックバンド・Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」のサビ部分と組み合わされる形で再拡散しています。
一見すると関連性が薄そうな「忍者の衣装で踊る映像」と「青春ポップなJ-ROCK楽曲」の組み合わせですが、実はそこに“違和感とエモさ”が掛け合わさったミーム的センスが見えてきます。
元ネタはなぜ注目されたのか?
ナルトダンスの元ネタは、中国のSNSプラットフォームに投稿された映像で、火影風の衣装を着た5人の若者が並んでステップを踏むような謎めいた動きをする、インパクトの強い内容です。
アニメ『NARUTO』をモチーフにしていることから、日本でも一定の親和性があり、アニメファンの間で注目されるようになりました。
さらに、彼らの動きがどこかぎこちなく、真剣なのかふざけているのかわからないという微妙なテンションが、逆に“クセになる”として話題を集めました。
このように、視覚的インパクトと絶妙なバランス感覚が視聴者の記憶に残り、ミームとしてのポテンシャルを秘めていたのです。
「ライラック」との意外な相性がバズを加速
ナルトダンスに使用されるBGMとして、当初は中国の伝統楽器を使った楽曲やゲーム音楽風の「一笑江湖」などが使われていました。
しかし、次第に日本の楽曲と掛け合わせた二次創作的な動画が増え、その中でも特に支持を集めているのが、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」のサビとあの踊りの組み合わせです。
「ライラック」のサビは疾走感と爽快感があり、映像のコミカルさを“感動風”に演出する効果を持っています。
まるで“ふざけた映像なのに泣けてくるような雰囲気”というギャップがあり、それが視聴者の琴線に触れて、拡散が加速したと考えられます。
TikTokでは、音源と映像のギャップが生む“エモい”感覚こそが、バズの鍵となることが多く、この事例はその典型と言えるでしょう。
「~になって今これ」のテロップが与える印象
このトレンドの映像では、ダンスと音楽に加えて「(〇〇になって)今これ」などのテロップが表示されることが特徴です。
この文言は、一見意味不明な映像に対して“意図や文脈”を補完する役割を果たしており、見る人に“納得感”と“笑い”を同時に与える効果があります。
たとえば、「浪人生活3年経って今これ」や「推しの卒業発表後、今これ」といった文脈で表示されると、視聴者はそのギャップにツッコミを入れたり共感したりしながら映像を楽しみます。
このようなフォーマットは、2020年代以降のネットミームの特徴である“感情の翻訳機能”を持っており、元ネタがどんなにシュールでも、ある種の“物語性”を与えることができます。
結果として、それぞれの視聴者が自身の経験と照らし合わせて楽しめるような、柔軟性の高いミームに進化しているのです。
音楽と映像のギャップがもたらすミーム的効果
ナルトダンスと「ライラック」の組み合わせが支持されている背景には、映像と音楽の“ギャップ演出”があります。
真面目に踊っているように見えて、どこか間が抜けていて、それを叙情的な楽曲に乗せることで「感動と笑い」が同時に生まれます。
これにより、動画視聴者は“よくわからないけど好き”“意味不明だけどクセになる”といった感情を抱きやすくなります。
ミームとしての生命力は、こうした一見無関係な要素同士を組み合わせて新しい“文脈”を生むところにあります。
ライラックの持つ青春性と映像のシュールさのミスマッチが、視聴者に独特の感情を残し、その再生・拡散を後押ししているのです。
TikTokは短時間で強い印象を与える演出が鍵となるため、このような強烈な印象の残るミームが特に拡散されやすい傾向にあります。

まとめ:ナルトダンス×ライラックは現代ミームの象徴
ナルトダンスにMrs. GREEN APPLEの「ライラック」が合わさる現象は、現代のネットミームのあり方を象徴する事例といえるでしょう。
シュールでナンセンスな元ネタが、音楽やテロップとの組み合わせによって“共感や感情”の文脈を持つようになり、再生数と共感を獲得するミームとして拡散されていきます。
今後も、このような“ギャップが生むエモさ”を活かした動画がSNSを通じて次々と誕生していくと考えられます。
ユーザーが意識せずとも、自然と“エンタメとしての違和感”に魅了されるこの流れは、短尺動画時代ならではの文化とも言えるでしょう。
そしてこの現象は、映像編集の巧妙さだけでなく、視聴者一人ひとりの“感じ方の多様性”に支えられた、新たなエンタメの形なのです。


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